ひなびた温泉津温泉の中でも、ひときわ目を引くレトロ調で洋風建築物である震湯(しんゆ)・薬師湯(湯元)は、古くから石見銀山の玄関口として栄えた温泉津の町並みの中心地に位置し、日本温泉協会の認定で、中国・四国地域で唯一の最高評価を取得した薬効豊かな湯と共に建築学的にも重要な建物として、専門家の間でも高く評価されています。
薬師湯は2005年9月付けで、日本温泉協会の新基準による審査結果、全項目「オール5」の天然温泉として認定されました。その名誉ある認定は全国に僅かしかなく、山陰地方では薬師湯(湯元)だけです。温泉は、ナトリウム・カルシウム塩化物泉です。その薬効豊かな湯の源泉は、施設の真後ろにあります。
源泉湯は約46度ですが、一切手を加えずに注ぎ込まれる湯は、湯船の奥と手前とで約3~4度異なり、湯船での湯温は温熱療法で最適といわれている40~42度前後で、体が芯から温まり、湯ざめし難いとお客様に喜んでいただいております。
薬師湯(旧藤乃湯)の旧館で、大正初期に建てられた木造洋館の震湯は、温泉街の中でも存在感があり、建築学的にも貴重な建物と言われ、温泉津に現存する温泉施設としては最古。当時、軒下には「温泉文化研究所」という大きな文字で右側から書き出された看板が建物の上部に掲げられていました。向かって右側のギャラリーは昔、女湯で、左側の重厚な家具調度品が好評のカフェ・内蔵丞は、男湯の更衣室でした。
左の写真の中央部分が、当時、施設の入り口でした。
金文字で「女湯」「男湯」と表示された当時のステンドグラスが左右の上部に残されています。この施設を建築する際(大正8年)、地元で大工として仕事をしていた方に、神戸まで勉強に行っていただきました。
その後で地元の材料を使い、建立したのがこの木造洋館です。 屋根から突き出した湯気だし塔や装飾棟を始め、ステンドグラスや軒下のアーチの細工などが珍しく見事です。 大正ロマンと昭和のレトロな風情があふれる新旧の薬師湯(湯元)は、観光客を魅了し、撮影スポットにもなっています。