温泉津神楽の歩み
投稿日:2012年07月31日 / 記事カテゴリー:薬師湯について
石見神楽は他の神楽に比較してリズムカルだと言われ、ファンの方が多いです。
今では毎月定期的に開催されている温泉津神楽ですが、もともと温泉津には神楽を舞うグループ(社中)はありませんでした。
数年前、地元から京都の造形大学へ進学した人がいて、その方が神楽面の制作に携わるようになったのが切っ掛けで、神楽を舞うグループ(温泉津社中)が誕生しました。
当初そのグループは、旅館の宿泊客の求めに応じるような形で、旅館の大広間で舞う事が多かったです。
そのような中、夕日の美しい福光海岸の砂浜で舞う「海神楽」というのを考え出したり、温泉津の花火大会の時に、花火が始まる前に京都造形大学の学生グループと一緒になって神楽を舞うようにしたりで実績を積み重ねて、少しづつ地元にも定着し、活動も活発になりました。
このような対外的な活動は続いていましたが、やはり、温泉津では旅館の大広間で舞う事が一般的でした。
そのような折、私が会員になっている温泉学会の大会が温泉津で開催されることになり、地元の芸術文化の紹介ということで、神楽を演じていただく事になりました。
学会を開催する時は地元の文化紹介があります。それで来訪者にとってもこの上もない思い出になると考え温泉津神楽の関係者に公演をお願いをしました。
いつものように「旅館の大広間ならばしましょう」でしたが、神楽の本来の姿である神社で舞ってもらう事にこだわりました。
最終的に地元の神社の関係者の方々にもご協力をいただき、神社本殿での公演が実現しました。
目の前で繰り広げられる見事な舞は、迫力満点で、本殿を所狭しと踊る姿に、演じる者も見る者も一体になった素晴らしいものでした。
その時の神楽が余りにも素晴らしかったので、学会のメンバーから鳴りやまない拍手と感動の言葉の数々に、逆に演じていた温泉津の舞妓連中の方が、びっくり仰天し、演じた方の人間が感動された一晩でした。
まさかあそこまでお客様が喜んでくれると思わなかった・・・・というのが、後で聞いた温泉津神楽社中の感想でした。
以来、少しづつ温泉津舞妓連中は、龍御前(たつのごぜん)神社で神楽を演じるようになり、今では毎週土曜日に龍御前神社で神楽を舞うようになりました。
本来の場所で演じる神楽を、臨場感あふれる神社の本殿で、しかも手の届くようなところの位置関係で見れるというのは、温泉津ならではだと思います。
こうした形で石見地方に伝わってきている郷土芸能を伝えていけることは幸せなことですし、あの場所、あの雰囲気で神楽を見れる私達も幸せ者です。
皆さんも、是非、温泉津の龍御前神社で行われる神楽をご覧くださいませ。
きっと素晴らしい思い出になる事と思います。